開幕10試合を終え、勝点「24」というハイペースで首位を走る東京。開幕からの好調がいつまで持続するのだろうかと気を揉んでいるうちに、リーグ戦無敗のままゴールデンウィークを終えたことになる。まだ気は抜けないし、このまま首位を走り続けたいところだが、前節のG大阪戦(A)では0-0のドロー。4日前に行われたルヴァンカップでも仙台に0-0で引き分けており、公式戦では2試合連続で無得点という状況である。個人的にはゴールを観たい一戦だ。東京は離脱していた室屋がスタメンに復帰したが、髙萩が警告の累積により出場停止。更にヒョンスと小川がベンチを外れており、いつものスタメンとはやや顔ぶれが変わっている。今節対戦する磐田は現在14位だが、前節の浦和戦(A)で後半ATの劇的な得点により勝利を飾っており、チームの雰囲気が良くなっていそうなのが気がかりだ。一方、その前節で決勝点を挙げたロドリゲスが親族の不幸のために一時帰国しており、今節は欠場。代わりに空中戦に強い中山がスタメンで1トップに入っている。
試合はコイントスで選択権を与えられた磐田がコートチェンジを選択。前節、このコートチェンジから自分たちに流れを呼び込んで勝利を収めているだけに、当然といえば当然の戦略だ。前半はこれといった決定機は互いに見られなかったものの、単発ながらシュートに持ち込む場面は磐田の方が作れており、東京にとってあまり良い展開とはいえない。前半終わり頃にはゴール前に攻め込んで連続でCKを獲得する場面もあったが、磐田が淡々と跳ね返し続けて0-0のままHT。前々節の松本戦では前半の先制点が試合運びを楽にした印象があっただけに、嫌なムードの折り返しだ。後半、早い時間に永井を下げて矢島を投入。裏のスペースがほとんど無い状況で、スピード勝負は望めないという判断か。その矢島も前線で何度か動きなおしを図りながらボールが出てくるのを待っているが、その肝心のボールがなかなか出てこない。磐田は時計が終盤に差し掛かるにつれて攻撃のカードを切り、前節同様にワンチャンスを狙っているのは明らか。DFラインにとっても気を抜けない難しい展開が続く。84分、東京は左CKに森重が完璧なヘディングで合わせるが、カミンスキーが素晴らしいセーブ。ここまでで最大のチャンスを逃す。立て続けの右CKは、ゴール前で矢島が競り合ったことでスクランブルの様相。磐田にクリアされそうになるが、PA左にボールがこぼれたところに詰めてきた久保が左足で強烈なプッシュ。これがゴール右隅に突き刺さり、終盤で遂に東京が先制!久保はこれが今季リーグ戦初得点だ。得点が必要になった磐田が残された時間で前に出てくる中、東京も得意のファストブレイクで対抗。途中出場となったサンホの2度にわたるビッグチャンスはいずれもカミンスキーの神がかり的なセーブで阻止されたものの、試合の幕引きを図るには久保の1点で充分だった。このまま試合終了。粘る磐田を東京が1-0で下し、リーグ戦の開幕からの無敗記録は「11」に伸びた。
結果的に東京が勝利したとはいえ、ここまでのホームゲームでは最も難しい試合だったように見えた。対戦相手から研究されていることは間違いないし、その上で今日の磐田は前節の勝利で得た勢いをしっかりと試合に持ち込んできた。ロドリゲスの不在による影響はあったと思うが、磐田の堅実な試合運びは全く間違っていなかった。それだけに、この試合で勝利したことには大きな価値がある。ベストメンバーが組めない中、守備でも無失点で耐え抜いたことで、リーグ戦でのクリーンシートは4試合連続。ヒョンス不在の穴を埋めた渡辺の安定感は際立っている。攻撃面でも、今まで幾度となく苦しめられてきた名手・カミンスキーに今日もことごとくチャンスを潰されたが、その牙城を久保の今季リーグ戦初得点で遂に崩した。久保にとっても大きな成長の一歩になったのではないか。流れの中ではチャンスを作れなかったが、途中交代の矢島が決勝点のセットプレイでの競り合いで関与しており、ベンチワークも的中したといえる。ここまでの勝点の積み重ねも間違いなく価値あるものだったと思うが、今日の勝利はそこから更に上のステージへ踏み出すものだったのではないだろうか、そんなことを実感できる試合だった。