元号が「令和」に改まってから最初に行われるJ1リーグ戦の第10節。東京はアウェイでのG大阪戦が予定されているが、旅費が嵩張るため今節はお留守番。代わりに近場の試合を観に行くことにし、埼玉をチョイス。連休中ということもあり、来場者数は最近の浦和でも少し珍しい50,000人超え。自分の座るメイン上層席もいつもは空席の方が多いが、この日はほぼびっしり埋まっていた。注目度が高い分、浦和はしっかり勝ち試合を見せたいところだろう。チームの状況は対照的だ。浦和はシーズン開幕時に採用していた4-4-2のシステムがなかなか上手くいかなかったものの、従来の3バックに戻してからはリーグ3連勝と復調気味。一方の磐田は第7節で清水とのダービーマッチで敗れてから3連敗と下降線を辿っている。
試合前のコイントス、磐田のキャプテン・大井はコートチェンジを選択。これで後半はビジター側コートで守備をすることができる。勝利のためならば何でもやる構えだ。相手が下位に沈んでいるとはいえ、持久戦に持ち込まれたくない浦和は前半からボールを保持して攻勢に出ようとするものの、5-4-1の強固なブロックを形成して「まずは守備から」という意思を明確にした磐田が実質的なペースを握る展開。スタートの位置こそ1トップの位置に入るアダイウトンも、シャドウの位置にいるロドリゲスとのポジションを頻繁に入れ替えながらボールに絡むことで脅威となっていた。0-0のまま折り返した後半も同様の展開が続く。浦和は攻めている時間こそ長いものの、明確な決定機をなかなか作ることができず。試合が佳境にさしかかってきた89分には、やや出入りの激しい展開から浦和のカウンターが始まり、山中がDFラインを突破して遂にGKと1vs1という局面まで作るものの、最後に慎重になってしまい、シュートへ持ち込めず。スタンドからは溜息と怒りの声がこだまする。これが最後のビッグチャンスか、という諦めのムードが漂うスタンドだったが、ドラマはATに待っていた。AT3分、浦和の自陣での不用意なバックパスに反応したのはロドリゲス。あっさりとGKと1vs1になると、これを冷静に流し込み、土壇場で磐田が1点を先制。まさか、と水を打ったように静まり返るスタンドの一角で、90分間耐え抜いてきた鬱憤を晴らすような磐田サポーターの大歓声が響き渡った。そのまま試合は終了。磐田が劇的な勝利で4試合ぶりの勝利を手にした。
磐田にとっては勝点1でも充分だったかもしれないが、それでも勝点3を奪うための布石を打ち続けていたことが最後に実った試合。浦和にボールを持たれる時間は多かったが、ボールを持てるロドリゲスなど2列目の選手がワイドに開いてボールを受けることで、上原・田口の両ボランチが内側から攻撃参加できるチャンスを作っていた。時計が進むにつれて浦和がより攻勢を強めると、中山・荒木という攻撃のスイッチを入れられる交代カードを切り、ボールを奪いに行く位置を上げてワンチャンスを窺っていた。連敗中という、メンタル的にも後ろ向きになりがちなシチュエーションだが、コイントスでのコートチェンジという気転も良い方に作用したのではないか。依然として厳しい順位にある磐田だが、今後の戦いに向けて希望を見出すことのできる1勝だと感じた。浦和はとにかく攻撃のバリエーションを増やせずに終盤までずるずると引っ張ってしまったことが最大の敗因だった。