ルヴァンカップのグループステージは全6節のうち折り返し地点となる第3節。第1,2節を共にアウェイで戦った東京は、柏・仙台を相手に連敗を喫しており、これ以上敗戦を重ねるとプレーオフステージ進出が厳しくなるだけに、まずはこのホームゲームで勝点「3」を挙げたいところ。本来のホームである味スタがラグビーW杯に伴う改修工事により平日に使用できず、代替会場となったのは、「日本ラグビーの聖地」として知られる秩父宮ラグビー場。秩父宮でサッカーの公式戦が行われるのは1964年の東京五輪以来、実に55年ぶり。気温6.6℃という低気温に加え、横殴りの雨が降りしきる極めてタフなコンディションとなり、観客数は5,000人を少し超える程度にとどまったが、Jリーグ、そして東京にとって歴史的な一戦だ。
試合は風と濡れたピッチコンディションの影響もあり、互いに攻めあぐねる展開。負けられないホームゲームということもあり、先週末のリーグ戦でも出場したレギュラーメンバーを5人スタメンで送り出した東京は、前から連動したプレスでボールを奪いに行きたいところだが、プレスがなかなか上手くハマらず、自陣に撤退してブロックの中で奪う場面が多くなる。攻撃では永井や羅相浩など脚力のある選手を裏のスペースに走らせてチャンスを狙うが、明確な決定機をなかなか作れず、セットプレイでも決めきれない。一方の鳥栖は、金崎・小野など個人で局面を打開できる選手の仕掛けで攻め込み、ボールを奪われてもすぐさま激しいプレスをかけて奪い返し、最短距離でゴールに迫る。フィニッシュの精度は低かったものの、狙った形を作れていたのは鳥栖。東京は得意の速攻を繰り出すことができずに我慢の時間を強いられたが、スコアレスで前半を折り返す。
後半に入ると、互いに攻撃の手を強めてゴール前までボールを運ぶ場面が連続。鳥栖はクエンカ、東京は久保を投入し、勝利を狙う姿勢をより明確にする。前線に強力なピースを加えた鳥栖の脅威はやや増したものの、試合が進むにつれて鳥栖の中盤と最終ラインの間にも徐々にスペースが生まれるようになり、東京はこのエリアを使って攻め込む場面を増やしていく。そして迎えた84分、東京はアタッキングエリアでのボールキープから右サイドで直接FKを獲得。距離・角度共に直接狙うにはやや厳しい位置だったが、キッカーとなった久保が左足を振り抜くと、低い弾道の強烈なシュートが巻くようにしてファーサイドのゴールネットに突き刺さり、1-0。流れの中で決定機を作れない中、久保の今季初得点で虎の子の1点をゲットした。結局これが決勝点となり、東京が1-0で勝利。秩父宮ラグビー場での記念すべき一戦を制しただけでなく、必勝態勢の選手起用が功を奏し、グループステージ突破に向けて大きな勝点「3」獲得となった。