2024.5.3 (金)
2024 明治安田J1リーグ 第11節
FC東京 × 京都サンガF.C.
( 味の素スタジアム,15:00 )
introduction
- 大型連休・後半戦の初日となる今日、5月3日は、家庭の都合が無く終日フリーの1日。そんな本日は我らがFC東京のホームゲーム開催日である。天候も朝から快晴で絶好の外出日和であり、早めに飛田給へ向かって「青赤パーク」でビールでも飲みながらまったり・・・という選択肢もあったのだが、ここしばらく取りまとめができていなかったサッカー観戦記録を午前中から整理していたらあっという間に時間が過ぎてしまい、気が付けばいつもと同じ支度の時間。結局、自宅を出たのはキックオフ1時間前を切ったタイミングであった。これではいつもと何も変わらない(笑)。
- 今日の東京の対戦相手は京都サンガF.C.。遠方のチーム相手ということもあり、多くの席種で当日券も出ていたようなので、入場にもそれほど手間取ることはないだろうと見ていたが、果たしてその予想は当たっていたようだ。味スタに到着したのはキックオフ20分前頃だったが、入場もいつもどおりスムーズ。スタンドに入ってみると、バックスタンドは下層・上層席共に多く入っているが、ビジター席は下層席も半分程度の入り。観客数も26,770人と味スタ開催時のごく平均的な入りである。
- J1リーグは先週末の4月27,28日に第10節を行い、今節(第11節)は中5日ないし中4日の日程。更に中2日の5月6日に第12節を行う関係で、今節は全10試合が同一日に組まれている。大型連休中ならではの変則日程で、各クラブとも厳しい連戦となるため、メンバーのやり繰りも含めてチーム力が試される時期である。5月はリーグ戦だけで第16節までの6試合が組まれており、休み無しで次々と試合がやってくるため、順位表上にも徐々に各チームの力関係が表れてくることになりそうだ。
- ホームの東京は前節を終えた段階で4勝3分3敗の勝点「15」。前回のホームゲーム、4月21日のFC町田ゼルビア戦では1-2で敗れてしまったが、先週末に行われた試合ではアウェイでアルビレックス新潟を3-1と撃破。サイドを使った速攻を中心に高いフィニッシュ精度で得点を重ね、更に負傷離脱から戻ってきたディエゴが途中出場から今季初得点を決めるなど、収穫の多い試合だった。今節はそのディエゴがスタメンから登場。離脱者、負傷者が続出しているトップ下のポジションには、前節にスクランブルながらトップ下で勝利に貢献した仲川が入りそうだ。
- 対する京都は、ここまで2勝3分5敗の勝点「9」。10試合を終えた時点で17位に沈んでおり、まずは浮上のきっかけを掴みたい時期だ。そんな京都だが、前節はアウェイでヴィッセル神戸に1-0と勝利。防戦一方を強いられた試合ながら、後半にワンチャンスを仕留めた原のゴールが決勝点となり、昨季王者から大金星を挙げている。
1st half
- スコアは開始早々に動く。4分、相手陣内でディエゴがボールを収め、これを仲川が引き取ると、右サイド裏のスペースへ出したスルーパスに安斎が追いつき、サイドを崩し切らずに若干早いタイミングでグラウンダーのクロスを送り込む。これが味方に合わず、勿体ない逸機になるかと思いきや、京都の選手同士がお見合いのようになってボールがファーサイドへ流れたところに猛然と走り込んできたのは左SBのバングーナガンデ。ダイレクトで得意の左足を振り抜くと、これがゴールネットに突き刺さり1-0。東京がテンポの良い攻撃から幸先良く先制点を奪ってみせる。
- その後も引き続き東京がサイドからのクロスでチャンスを作る場面があったものの、京都も徐々に守備がアジャストして中盤でボールを奪うようになってくる。15分には麻田がボックス内左のポケットにフィードを入れ、これを受けた豊川が中へ折り返し、走りこんできた原がヘディングに持ち込むが、東京の守備が寄せていたためどうにか枠外に外れる際どい場面。ゴール前へ積極的に顔を出してくる豊川と、ボディバランスが持ち味の原だけはどうしても抑えなければならない。
- 21分、東京は最終ラインからのパスを左サイドで受けた俵積田がドリブルで持ち運び、アタッキングゾーンまで進出。高とのパス交換からカットインでマークを剥がし、やや浅い角度から右足でクロスを送り込むと、中央のディエゴが頭で合わせ、これがゴール左隅に決まって2-0。シュートというよりは頭に軽く当ててコースを変えるだけという、ディエゴの技術が詰まった見事なフィニッシュだ。少し京都に押される場面の続いていた東京にとって非常に大きな追加点が入り、スコアを突き放す。
- その後も東京が押し気味で試合を進める。31分には中央で高のパスカットからボールを受けた仲川がドリブルで中央を強引に突破し、一気にゴール前まで持ち運ぶが、フィニッシュの寸前で相手のカットが入り得点には繋げられず。39分には右サイドで獲得した直接FKを安斎が中に蹴り入れ、ニアで森重が合わせてゴールネットを揺らすもののオフサイドの判定。42分には京都のFKのチャンスを守備が跳ね返し、クリアボールを仲川が回収してカウンターが発動。俵積田を経由してスルーパスにバングーナガンデが抜け出しかけるが、僅かにボールが伸びてGKに抑えられてしまう。いくつか3点目のチャンスはあったが、結び付けられずに2-0で前半終了。理想的な展開であることには疑いないが、京都も単発ながらチャンスを作ってきており、決してセーフティともいえない状況だ。まずは早い段階で追加点が欲しい。
2nd half
- ハーフタイム明け、東京は前半に相手のチェックを受けた際に足を痛めた様子だった土肥が交代。代わって明治大学卒のルーキーであり、東京の下部組織出身でもある岡がリーグ戦デビューを飾る。対する京都も平戸と鈴木(冬)の2枚を同時投入。システムはそのままだが、複数の選手がポジションをスライドして大幅な見直しを図ってきた。
- その2枚替えの影響か、後半は立ち上がりからやや京都が支配。特にプレスの強度が上がった印象で、その影響もあってかセカンドボールを拾われるようになる。東京は受けに回る時間が長くなっており、このままやられ続けると怖い展開だ。59分、京都は更に一美と平賀のアタッカー2枚を同時に投入。これは明確に点を奪いに行こうとする采配だ。対する東京も直後の61分に小泉と仲川を下げて原川とジャジャを投入。展開を考えれば小泉は残してほしかったが、前半で既にカードを1枚受けているため退場のリスクを考慮しての交代か。ジャジャには前線でひたすらかき回してもらうしかない。
- 65分、東京はジャジャがボールを収めてから右サイド裏に走った安斎へパスを通し、安斎が絶妙なクロスを中へ送り込むが、中に詰めてきた俵積田とは僅かに高さが合わず、流れてしまう。72分にはその俵積田を下げて野澤(零)が入る。高い位置から相手に制約をかけることができる野澤の存在はここでは頼りにしたいところだ。75分にはその野澤が白井に繋いで右サイドからクロスを入れ、こぼれ球を高がミドルシュートで狙うが京都がブロック。続くCKもゴール前の密集のこぼれ球をゴール至近のポケットで拾った安斎が咄嗟にニアサイドを狙うが、ヒットしきれず枠を捉えられない。流れを持っていかれつつある中で早めに3点目を奪ってケリをつけたいところだが、その重要な1点がなかなか遠い。
- すると79分、京都は左CKを獲得し、ニアに蹴ったところに待っていた平賀がいち早く頭で合わせ、これが決まって2-1。セットプレーから京都が1点差に詰め寄る。東京はディエゴを下げて長友を投入し、白井を左ウイングのポジションにスライドして守備を強化。攻勢を強める京都に対してはひたすらカウンターを狙う。84分にはそのカウンターから野澤が抜け出し、GKと1vs1のシチュエーションを迎えるが、シュートは飛び出してきた具聖潤にセーブされてしまう。ドリブルで抜くなりループで頭上を抜くなり、いくつか選択肢があった野澤だが、J1初ゴールが懸かった重要な局面で淡白なフィニッシュになってしまった。これは決めてほしい。
- 終盤も京都がセットプレーを多く獲得して東京ゴールに迫る中で迎えた後半AT、東京ゴール前の攻防で平賀のシュートが森重に当たり、京都の選手が一斉にハンドをアピール。するとしばらく間を置いたのち、岡部主審はホイッスルを吹いてPKの判定。東京にとってはよもやのジャッジだ。まさか・・・という空気の流れる中、VARが介入。オンフィールドレビューとなり、ビジョンにはボールが森重の腕に当たるものの、その腕は身体に付いており、決して明確にハンドとも言いづらい映像だ。そして注目の判定は「PK無し」。なんとPKが取り消しになる。東京にとってはまさに命拾いだ。京都ベンチが騒然とする中でゲームは再開するが、残りの時間はどうにか東京が耐えきり、タイムアップのホイッスル。東京が2-1で僅差のゲームを制し、リーグ戦2連勝を飾っている。
impressions
- 最終的に3ポイントを獲得できたとはいえ、薄氷を踏むような勝ち方だった。前半の立ち上がり早々にリードを奪い、更に追加点も決める理想的な展開だったが、そこから一転して難しい撤退戦を強いられることになってしまった。最近は「2-0は危険なスコア」という表現は使い古されすぎたせいかほとんど聞かれないが、その通説を地で行くような展開だったと思う。後半からの京都のカムバックに対して完全に受け身になってしまい、「ビビってしまった」ことが苦戦の要因といえるだろう。楽に勝てる試合など一つもないことを改めて教えられた90分間だった。
- 京都は結果的に敗れたとはいえ、攻撃面ではよく組織された怖いチームだった。前半は3トップにサイドバックも加わって幅を取りながらアタッキングゾーンに侵入し、馬鹿正直に中へクロスを送り続けるのではなく、ハーフスペースを陥れながら確実にフィニッシュを狙ってきた。後半はプレスの強度を上げてセカンドボールを支配し、競り勝てる選手を次々に投入してシンプルにゴール前を脅かしてきた。狙いは明確だったが、分かっていてもなお対処に苦労させられた印象だ。前半のサイドの守備で後手を踏まなければ、普通に勝っていてもおかしくない試合だったと思う。
- その裏返しにはなるが、東京の最大の勝因は、前半の早い時間帯でサイドの優位性を確保できたことに尽きる。京都が最終ラインを高めに設定して入ってきた中、ディエゴのポストプレーから安斎がサイドの裏を突き、相手の目線をずらした上でクロスを逆サイドのバングーナガンデが仕留めた先制点は見事のひとこと。出会い頭の一発ともいえるが、相手の守備対応がアジャストする前にゴールを奪いきったことが結果を大きく左右した。ディエゴが決めた2点目も、俵積田が左サイドで勝負を仕掛け、味方のサポートを受けながらクロスを上げきったことで生まれたものだ。いわゆる「自分たちの時間帯」でゴールを取り切れているのは今季の東京の良いところであり、好調の源泉ともいえる。この流れは維持していきたいところだ。
- 一方、後半の試合運びに関しては今後に向けて大きな不安が残った部分だ。プレスを強めてきた相手に対し、一旦受けに回ったこと自体に関しては、戦い方のひとつなので理解はできるが、そこからどうするかというアイデアの部分で京都を上回ることができなかった(土肥の負傷交代の影響で合わせるのが難しかったというエクスキューズはあるが)。カウンターを中心にある程度攻撃の手も出すことはできていたが、決め手を欠いて京都に傾く流れを食い止めることができなかった。例えば野澤は守備面だけでなく、「試合を終わらせる」役割を託されてピッチに送り出されたと思うが、プレーに「重み」が足りなかった感は否めない。まだJ1での経験が浅いとはいえ、短い時間で結果を出すしかないのだから、そこは頑張ってもらうしかない。
- 得点シーンを除き、この試合で最大のハイライトといえる場面は、やはり後半ATに起きたPK判定が覆った事案だろう。東京にとっては九死に一生を得た場面だった。VARのチェックにより森重の手が身体に付いていたことが確認できたことで運良く(?)判定が覆った形だが、そこに至るまでの流れは少しモヤッとした印象が残った。主審が笛を吹かなかった事象に対してVARがハンドを指摘し、判定が変更となるのは「よくあること」である。しかし、主審がPKの笛を吹いた事象をVARがチェックしたら違っていた、というのはあまり見ない出来事だ。ボールが手に当たった事象すべてがハンドリングに該当するわけではないので、そういうこともあり得ると理解はできるが、今回の判定の流れは京都の選手のアピールにより、主審が笛を吹いてしまったように見えたことで妙にややこしくなった。結果的にPKが取り消され、京都ベンチが気色ばんだのも仕方ないのかもしれない。VARがスタンバイしている状況で笛を吹く主審の判断の難しさも垣間見た結末だった。
- 「危なげがありすぎ」ながらもどうにか逃げ切ることのできた東京は5勝3分3敗とし、順位も6位に浮上。首位のFC町田ゼルビアとは依然として4ポイントの差をつけられているが、上位争いに絡める状況を維持できたのは良いことだろう。次節は中2日で北海道コンサドーレ札幌とのアウェイ戦。タイトな日程のうえに長距離移動が重なり、東京にとってはタフな条件になる。昨年はアウェイ・札幌戦で1-5と大敗を喫した苦い経験があるだけに、今季はリベンジを果たせるか注目だ。
FC東京 |
2 |
2 | 前半 | 0 |
1 |
京都サンガF.C. |
0 | 後半 | 1 |
|
|
|
バングーナガンデ 佳史扶 | 4' | 得点 | 79' | 平賀 大空 |
ディエゴ オリヴェイラ | 21' | | | |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 94 | 具 聖潤 |
DF | 99 | 白井 康介 | DF | 2 | 福田 心之助 |
| 32 | 土肥 幹太 | | 5 | アピアタウィア 久 |
| 3 | 森重 真人 | | 4 | 松田 佳大 |
| 49 | バングーナガンデ 佳史扶 | | 3 | 麻田 将吾 |
MF | 8 | 高 宇洋 | MF | 19 | 金子 大毅 |
| 37 | 小泉 慶 | | 16 | 武田 将平 |
| 39 | 仲川 輝人 | | 18 | 松田 天馬 |
FW | 38 | 安斎 颯馬 | FW | 23 | 豊川 雄太 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 14 | 原 大智 |
| 33 | 俵積田 晃太 | | 44 | 佐藤 響 |
GK | 1 | 児玉 剛 | GK | 26 | 太田 岳志 |
FP | 5 | 長友 佑都 | FP | 22 | 一美 和成 |
| 28 | 野澤 零温 | | 24 | 宮本 優太 |
| 30 | 岡 哲平 | | 28 | 鈴木 冬一 |
| 40 | 原川 力 | | 31 | 平賀 大空 |
| 43 | 徳元 悠平 | | 39 | 平戸 太貴 |
| 70 | ジャジャ シルバ | | 50 | 鈴木 義宜 |
バングーナガンデ 佳史扶 | | 4' | 得点 | | | |
| | | 警告 | 9' | | 豊川 雄太 |
小泉 慶 | | 19' | 警告 | | | |
ディエゴ オリヴェイラ | | 21' | 得点 | | | |
| | | 交代 | HT | | 武田 将平 |
土肥 幹太 | | HT | | 平戸 太貴 |
岡 哲平 | | | 松田 佳大 |
| | | | 鈴木 冬一 |
| | | 警告 | 56' | | 佐藤 響 |
| | | 交代 | 59' | | 豊川 雄太 |
| | | 一美 和成 |
| | | 松田 天馬 |
| | | 平賀 大空 |
小泉 慶 | | 61' | 交代 | | | |
原川 力 | | | |
仲川 輝人 | | | |
ジャジャ シルバ | | | |
| | | 警告 | 63' | | 平戸 太貴 |
俵積田 晃太 | | 72' | 交代 | | | |
野澤 零温 | | | |
| | | 交代 | 76' | | 福田 心之助 |
| | | 宮本 優太 |
| | | 得点 | 79' | | 平賀 大空 |
ディエゴ オリヴェイラ | | 80' | 交代 | | | |
長友 佑都 | | | |
| | | 警告 | 90+5' | | 西形 浩和(フィジカルコーチ) |
岡 哲平 | | 90+9' | 警告 | | | |