2023.7.16 (日)
2023 明治安田生命J1リーグ 第21節
FC東京 × 鹿島アントラーズ
( 味の素スタジアム,19:00 )
introduction
- J1リーグ戦はこの週末のゲームを終えた後に3週間のインターバルを挟むスケジュールとなっており、このゲームでまずはひと区切りという形になる。横浜F・マリノスや川崎フロンターレといった強豪チームは、この中断期間の間に海外クラブとのフレンドリーマッチなどが組まれているが、我らがFC東京は8/2に予定されている天皇杯ラウンド16の試合まで公式戦が組まれておらず、このゲームに全精力を注ぎ込めることになる。本日、ホーム・味スタに迎える相手は鹿島アントラーズだ。
- 今日の関東地方はここまでの夏でおそらく一番と思われる猛暑に見舞われ、東京都心でも最高35℃まで上昇。自分も昼間に近所のファミレスまで出掛けたが、日傘を差していないと身の危険すら覚えるような容赦ない日差しだった。夕方になって多少はマシになったが、それでも公式記録の気温は32.5℃(!)。これに加えて今日は夕方に京王線で人身事故があったらしく、飛田給に向かう特急列車もいつも以上に混雑しており、スタジアムに着くまでで既に疲労困憊だ(笑)。この中で選手たちはプレイしなければならないのだから、本当に夏場の戦いは過酷である。ここ最近は「秋春制」へのシーズン移行の議論が再燃して大きな話題となっているが、結論がどうなるにせよ、この季節における選手の負担を減らす施策は何かしら必要だろう。
- 東京にとって直近の1週間のスケジュールは非常にタフであった。7/9に行われたリーグ戦のアウェイ・浦和レッズ戦は、激しい攻防が繰り広げられた末に両者守備が持ちこたえて0-0のスコアレスドロー。勝ち切ることはできなかったが、苦手の埼玉スタジアムでの試合ということを考えれば充分に納得の行く結果であった。そして中3日で迎えたミッドウィークの7/12には、天皇杯3回戦で東京ヴェルディと対戦。2011年シーズンのリーグ戦以来となるダービーマッチは東京が前半に1点を先制したものの、後半にセットプレイで追いつかれて延長戦に突入。結局PK戦にまでもつれ込み、9-8でどうにかライバルチームを退けることに成功している。本日はこの死闘から更に中3日での試合となっており、選手たちの疲労が気にかかるところだが、スタメンは大半が入れ替え無し。この起用がどう出るか。なお、7/13にベルギー1部のモレンベークへの完全移籍が発表された安部は、この試合が東京でのラストマッチとなる。
- 対戦相手の鹿島は現在勝点「30」でリーグ6位。昨季途中からチームを率いる岩政大樹監督のもと、シーズンの出だしこそ躓いたものの、軌道に乗ってからは比較的コンスタントに勝点を伸ばしている。他方、7/12に行われた天皇杯3回戦の試合ではJ2のヴァンフォーレ甲府と対戦し、延長&PK戦の末に敗戦。昨季0-1で敗れた天皇杯準決勝と同カードで雪辱を期した試合ながら、またしても苦杯を飲んだ。鹿島のメンバーのうち6人は天皇杯からの継続スタメンとなり、東京よりはメンバーを入れ替えているが、120分を戦った末に敗退という結果がチーム状態にどう影響するか。勝点「26」の東京とは4ポイント差で、東京にとってはこの試合で勝利してポイント差を詰めておきたいところだ。
- なお、この天皇杯の一戦では、飛田給駅前にあるヴェルディのスポンサー看板の汚損行為や、選手入場時における東京ゴール裏での発炎筒の使用といった事案が発生。看板の汚損については本日時点で警察の捜査が続いている一方、発炎筒については3人の使用者が自ら名乗り出たことで、FC東京が関係する試合への入場禁止処分が暫定的に下された。その影響で、応援をリードしている団体がホーム側スタンドの横断幕の掲出、コール・チャントの先導、そして太鼓の使用を自粛。自然発生的な声援だけがこだまする、いつもとは異なった雰囲気が支配する中でのキックオフとなった。
1st half
- 立ち上がりから鹿島が早くもチャンスを作ってくる。3分、左サイドの仲間が中央へ侵入してのミドルシュートはスウォビィクが弾いて事なきを得るが、6分には鈴木がPA内に侵入して折り返すと、これが東京の選手に当たってコースが変わりクロスバーを直撃。危うく失点を逃れる。
- 鹿島の圧力に苦しむ東京だが、9分にスウォビィクが長いボールを蹴ると、ハイラインを保っていた鹿島のDFライン裏のスペースに松木が絶妙なタイミングで飛び出しフリーになる。松木がドリブルでアタッキングゾーンまで前進してディエゴに折り返すと、帰陣した鹿島の選手のタイミングを外して反転シュートに持ち込み、これがGK・早川の逆を突く形となってゴールネットを揺らす。最初は松木が飛び出した場面のオフサイドディレイによりゴール取り消しとなるが、VARによるチェックの結果、松木のオンサイドが認められてゴールに判定変更。東京が1-0と先制する。
- 先制点を奪ったことで東京が優位に進められるかと少し安堵しながら試合の推移を見守るが、鹿島も黙ってはいない。23分、左CKに対して空中戦で競り勝った鈴木が強烈なヘディングシュート。これがクロスバーを叩きながらもゴールに吸い込まれて1-1。鹿島がセットプレイでタイスコアに戻す。ホーム側スタンドの前で派手なガッツポーズを繰り出した鈴木に対して強烈なブーイングが浴びせられるが、彼にとってブーイングはある意味「養分」でしかないだろう。
- 飲水タイム前後までは両者中盤での潰し合いが続き、東京も攻守共に悪くない内容だったが、時計が進むにつれて少しずつ鹿島の強烈なカウンターが増える展開に。東京は自陣で跳ね返す守備で持ちこたえ、決定機の場面こそ作らせないものの、自陣に戻っての守備は体力的にもかなり辛いはずだ。攻撃では37分にディエゴが右サイドからドリブルで仕掛けてアタッキングゾーンまで侵入すると、中への折り返しを東が落とし、最後は安部がフィニッシュ。押し込まれる中で数少ないチャンスとなったが、このシュートは枠を捉えられない。
- 前半終了が近づく中、鹿島は再びサイドから攻勢を強める。45分、安西が左サイドから仕掛けて折り返し、鈴木がフィニッシュに持ち込もうとするが辛うじて東京がクリア。一難去ったかと思われたが、このクリアが小さくなったところを樋口が拾って中にシュート性の速いボールを送り込むと、ファーサイドで待っていた垣田が頭で押し込み1-2。前半のうちに鹿島が逆転に成功する。前半はこのまま鹿島のリードで終了。東京としてはせめて同点で終えたいところだったが、リードを許してしまった以上はゴールを取り返さなければならない。疲労も考えると選手交代で活路を見出したいが、どうなるか。
2nd half
- 両チーム選手交代無しで迎えた後半、鹿島が立ち上がりからギアを上げてくる。47分に鈴木と安西のコンビネーションでボックス内まで崩しての折り返しは、東京がゴール前でどうにかクリア。53分には東京の陣内で手数をかけた崩しからのピトゥカのシュートが枠を外れて事なきを得る。直近の勝てていた試合では後半の立ち上がりにエンジンをかけ直すことができていた東京だが、今日は逆に出足が悪い。
- 54分、鹿島は安西が再び左サイド深くまで攻め込み折り返し。ニアに飛び込んだ仲間がダイレクトで合わせたフィニッシュはスウォビィクが身体に当ててどうにかセーブするが、そのこぼれ球をピトゥカが胸トラップから右足を振り抜くと、矢のようなシュートがゴール左下に突き刺さり1-3。さすがのスウォビィクも、厳しいコースを射抜くこのシュートには精一杯手を伸ばしても届かなかった。鹿島がリードを2点に広げ、俄然試合を有利な展開にする。
- ここまでの展開を見る限り、スタメン11人だけの力で試合を動かすのは少し厳しいそうだと感じつつ見守るが、点差を広げられてもベンチはなかなか動かない。最初の交代は追加点を許しておよそ10分後の63分。長友と東に代わって徳元と塚川が入る。フレッシュな選手の投入で試合の流れを引き戻したいが、鹿島も68分にCKからピトゥカがドライブシュートを放ちスウォビィクが危うく掻き出すと、2本めのCKでは植田のヘディングシュートがゴールのわずか右に外れる。これ以上の失点は勝敗を決定づけるものとなるので命拾いだ。
- 飲水タイムの間に東京は俵積田を下げ、負傷離脱から戻ってきたアダイウトンを左サイドに投入。アダイウトンの個人での打開に期待したいところだが、鹿島も両サイドアタッカーを樋口・仲間から松村・荒木にスイッチして中盤の主導権を譲らないスタンス。この鹿島の采配は的確で、中盤の奪い合いで東京は全く主導権を握ることができず、頼みのアダイウトンが仕掛けやすい状況でボールを供給することができない。鹿島にボールが渡るたびにお馴染みのチャントである「ロール」が延々と繰り返される。完全に鹿島の思うつぼの展開だ。
- 残り時間がみるみる無くなっていく中で迎えた89分、東京は左サイドから松木のスルーパスに途中出場の熊田が抜け出してGKと1vs1のチャンス。これを安西が後ろから手を使ったファウルで止める。池内主審のジャッジはレッドカード。ここまでMOM級のパフォーマンスを見せていた安西の一発退場により、鹿島が10人となる。ゴール正面の絶好の位置で得た直接FKを決めれば1点差となり、残り時間に希望が見えてくる状況だが、松木が狙ったキックは惜しくも壁に当たり枠の外へ。そして、これがこの試合最後のチャンスだった。追加タイムこそ長めにとられたものの、鹿島がしっかりと撤収を完了させ、1-3で試合終了。鹿島が勝点を「33」に伸ばして6位をキープした一方、勝点「26」どまりの東京は順位を12位に落としている。
impressions
- クラモフスキー体制で初めてとなる敗戦は、相手の狙い通りの試合展開にはめられての完敗となった。天皇杯で延長戦とPK戦を戦ってから中3日での試合であり、メンバーをほぼ入れ替えずに試合に臨んだため、疲労の蓄積を考慮すれば難しい試合になることは想像に難くなかったが、やはり鹿島は強さを見せてきた。ただ、鹿島も天皇杯で延長+PK戦の末に敗退という厳しい結果から中3日での試合であり、条件としては大きな差異は無かった。多少鹿島の方がメンバーを入れ替えていたとはいえ、フィジカル面とメンタル面で確実に立て直してきたのはアウェイチームの方だった。そこはさすが鹿島と認めなければならない。前半途中以降で足が止まってしまった理由として疲労を挙げることは仕方ないとしても、それを言い訳にして負けが許されるわけでは決してないことは改めて認識しておきたい。
- 試合の序盤は悪くなかった。鹿島も強めの圧力をかけてきてピンチを迎える場面もあったが、東京も前進的な守備でボールを奪い返し、攻め込むことができていた。先制点の場面は最後列のスウォビィクのフィードが裏のスペースの松木に通ったものだが、全員が前を意識していたからこそこのチャンスが浮くれたものと見る。ディエゴのシュートを打つタイミングも見事で、さすがといえるものだった。しかしセットプレイであっさり追いつかれてしまい、それからは中盤のプレスをかわされる場面が少しずつ増えてきて、最終ラインで跳ね返すことしかできなくなった。せめて前半を1-1の同点で終えることができていれば幾分はましな精神状態で後半に臨むこともできただろうが、そこは鹿島の押し切る力が一枚上手だったということなのだろう。
- 後半になって鹿島がギアを一段上げてきてからも、東京はついていけなかった。鹿島の3点目の場面も、仲間のシュートをスウォビィクのスーパーセーブで一度は窮地を脱したかに見えたが、こぼれ球を拾ったピトゥカに対して誰もアプローチをかけられずにフリーでフィニッシュを許している。疲労の影響もあったのかもしれないが、ここで踏ん張れなかったことで勝敗の明暗が分かれたことは間違いないだろう。また、東京の最初の選手交代は63分まで待つことになったが、果たしてそこまで引っ張る必要があったのかは少し疑問だ。結果的には徳元のロングスローやアダイウトンの突破が試合の流れを動かすまでには至らなかったが、終盤に若干のばたつきがあったことを考えれば、もう少し早めに動いていたらどうだったかという悔いは残る。
- 失点の仕方も気になるポイントだ。鹿島の同点ゴールはCKによるものだったが、CKを決められて追いつかれるという展開は、水曜日のヴェルディ戦で決められたものと全く同じ。更にいずれも自分たちが守りを固めているエリアの外から入ってきた選手を捕まえられずに被弾している。今日に関しては鈴木のポジショニングと身体能力の高さを褒めるべきかもしれないが、これを偶然で片付けてよいかどうかは議論の余地がありそうだ。セットプレイの失点は致し方ない部分があるのかもしれないが、それまでの良い流れが途絶えてしまうという意味で、絶対に防ぎたい形であるのもまた事実。セットプレイも含めた守備全体の見直しが必要だ。
- 今日のゲームはクラモフスキー体制で初めて相手にリードを許す展開だったが、そこで新たな引き出しが見えたかというと、正直なところよく分からなかった。鹿島がスペースを消してきたこともあるが、アダイウトン単独の仕掛けも功を奏しなかった。むしろ相手にリードを許したら基本的にスペースを消されるのは当たり前で、その中でどのような工夫を見せるかが重要となってくる。指揮官が交代してからなかなか準備期間が与えられていないのも事実であり、これに関しては中断期間の宿題になりそうだ。
- 今日が東京での最後のプレイとなった安部にとっても悔しい結果となったはずだ。前半は積極的に攻撃に絡み、ゴールに迫る場面も見られたが、後半は鹿島が中盤を支配したこともあり、残念ながら存在感は薄かった。ただ、区切りとなる試合で結果が出なかったというだけで下部組織にいた頃を含めてのFC東京への貢献が色褪せることは無い。試合後の挨拶も安部らしい「ゆるい」トークで締めてもらい、敗戦のショックが残る観客席も幾分かは和んだように感じられた。ベルギーでも持ち前のマイペースぶりを生かして活躍してくれればと思う。
- リーグ戦は今節を終えて一旦中断期間に入り、3週間のインターバルがある。8/2に天皇杯ラウンド16のロアッソ熊本戦、更に8/6にリーグ戦再開ゲームとなるセレッソ大阪戦が予定されている。いずれもアウェイでのゲームであり、タフな連戦になるが、それまでにしっかりと回復を済ませて戦術の立て直しを図りたいところ。夏の移籍市場では京都サンガF.C.から白井を補強し、ポルトガルに期限付き移籍していた田川の復帰も発表されている。新たなメンバーを加えてどのようにチームを立て直しアップデートするのか、8月の中断期間明けに注視していきたい。
FC東京 |
1 |
1 | 前半 | 2 |
3 |
鹿島アントラーズ |
0 | 後半 | 1 |
|
|
|
ディエゴ オリヴェイラ | 9' | 得点 | 23' | 鈴木 優磨 |
| | | 45' | 垣田 裕暉 |
| | | 54' | ディエゴ ピトゥカ |
GK | 27 | ヤクブ スウォビィク | GK | 29 | 早川 友基 |
DF | 37 | 小泉 慶 | DF | 22 | 広瀬 陸斗 |
| 4 | 木本 恭生 | | 55 | 植田 直通 |
| 3 | 森重 真人 | | 5 | 関川 郁万 |
| 5 | 長友 佑都 | | 2 | 安西 幸輝 |
MF | 7 | 松木 玖生 | MF | 14 | 樋口 雄太 |
| 8 | 安部 柊斗 | | 21 | ディエゴ ピトゥカ |
| 10 | 東 慶悟 | | 25 | 佐野 海舟 |
FW | 11 | 渡邊 凌磨 | | 33 | 仲間 隼斗 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | FW | 37 | 垣田 裕暉 |
| 33 | 俵積田 晃太 | | 40 | 鈴木 優磨 |
GK | 41 | 野澤 大志ブランドン | GK | 31 | 沖 悠哉 |
FP | 15 | アダイウトン | FP | 3 | 昌子 源 |
| 17 | 徳元 悠平 | | 8 | 土居 聖真 |
| 26 | 寺山 翼 | | 10 | 荒木 遼太郎 |
| 29 | 熊田 直紀 | | 27 | 松村 優太 |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 34 | 舩橋 佑 |
| 42 | 野澤 零温 | | 36 | 師岡 柊生 |
ディエゴ オリヴェイラ | | 9' | 得点 | | | |
| | | 得点 | 23' | | 鈴木 優磨 |
| | | 得点 | 45' | | 垣田 裕暉 |
| | | 得点 | 54' | | ディエゴ ピトゥカ |
長友 佑都 | | 62' | 交代 | | | |
徳元 悠平 | | | |
東 慶悟 | | | |
塚川 孝輝 | | | |
| | | 警告 | 65' | | 垣田 裕暉 |
| | | 交代 | 70' | | 樋口 雄太 |
俵積田 晃太 | | 70' | | 松村 優太 |
アダイウトン | | | 仲間 隼斗 |
| | | | 荒木 遼太郎 |
| | | 交代 | 75' | | 垣田 裕暉 |
| | | 師岡 柊生 |
渡邊 凌磨 | | 86' | 交代 | | | |
熊田 直紀 | | | |
松木 玖生 | | 89' | 警告 | | | |
| | | 退場 | 90' | | 安西 幸輝 |
| | | 交代 | 90+4' | | 鈴木 優磨 |
| | | 土居 聖真 |
| | | 師岡 柊生 |
| | | 舩橋 佑 |