2023.6.3 (土)
2023 明治安田生命J1リーグ 第16節
FC東京 × 横浜F・マリノス
( 味の素スタジアム,15:00 )
introduction
- 6月に入り、J1リーグ戦はこの週末で第16節。早くも全34試合の折り返し地点を迎えようとしている。我らがFC東京は今週末、久々に味スタでリーグ戦のホームゲームだ。5月はカップ戦を含めてホームゲームが2試合あったものの、いずれも平日開催だったし、リーグ戦の試合は国立競技場での開催だったので、週末の味スタ開催は4/29のアルビレックス新潟戦以来だ。現状、平日のナイトゲームに行くのが難しい自分にとっては、まさに一日千秋の思いで待ちわびた週末でもある。そんな東京が本日迎え撃つ相手は、昨季のJ1リーグ王者でもある、横浜F・マリノス。チームにとって、リーグ前半戦最後の山場ともいえる大一番だ。
- 今週は台風2号の日本列島への接近に伴い、週の後半は関東地方も天候が荒れ模様。当初は本日の天候も雨予報と影響が心配されたが、台風がやや早めに過ぎ去ってくれたこともあり、昼前には晴れ間が見えるまでに回復した。今日は昨年11月以来2度目となる「青赤ストリート」が開催され、多くの屋台が飛田給駅前の歩行者天国に軒を連ねていたので、イベントの企画に携わった関係者も胸を撫でおろしたことだろう。味スタに集まった観客は28,553人で、対戦相手が横浜であることを考えればもう少し入っても良かった気がするが、それでもビジター席はぎっしりと埋まっていて、程よい緊張感の中での試合となりそうだ。
- リーグ戦の直近2試合がアウェイでの連戦だった東京は、5/20の第14節・鹿島アントラーズ戦で1-1のドロー。そして5/27の第15節・ヴィッセル神戸戦は2-3の敗戦。第13節の川崎フロンターレ戦を2-1で勝利し、上位進出の足掛かりとしたかった上位チームとのアウェイ連戦を1分1敗で終えている。そして今日ホームに迎える横浜もまた2位につけており、ここで勝利すればまだ上位進出の望みが繋がるというシチュエーションだ。その横浜は現時点で首位の座こそ神戸に譲ってはいるものの、今季も安定して勝点を積み重ねており、現在は2連勝中。この試合で勝利すれば暫定で神戸と勝点で並ぶだけに、やはり必勝体制で臨んでくるはずだ。
- 東京のスタメンで最大の注目はなんといっても仲川だろう。昨季まで所属していた古巣・横浜との、初めての直接対決。チームとしても仲川の推進力とキープ力を生かしてどこまで戦えるかがポイントになる。また、アンカーには青木が今季初のスタートからの起用。スペースのカバーリングやボール回収に期待したい。控えにはU-20ワールドカップから帰国したばかりの松木が入っており、ベンチも含めた総力戦で臨む。対する横浜は最近のチームの好調さゆえにメンバーがほぼ固まっている印象があり、本日も予想どおりのスタメン。中でもロペス・ヤンマテウス・エウベルの3トップは強烈だ。
1st half
- スコアは開始から1分も経たないうちに動く。横浜はこの試合最初のポゼッションで右サイドにボールを展開すると、味方とのワンツーで裏のスペースに抜け出したヤンマテウスに対応した徳元がピッチに足を滑らせて転倒。完全にフリーとなったヤンマテウスがクロスを入れると、中央のロペスが競り合いながら頭でコースを変える。これがゴール左隅に決まって0-1。早々に横浜が先制する。徳元のスリップは不運でしかないが、東京にとっては苦しい失点だ。横浜は5分にもヤンマテウスが裏のスペースに抜け出してビッグチャンスを得るが、スウォビィクがシュートをストップして立て続けのゴールは許さない。
- 東京は出鼻を挫かれた形だが、その後は主導権を握る。特に重視しているように見えるのはボールを奪ってからの切り替えの部分で、早めに裏のスペースへボールを運ぼうとする場面が目立つ。ここで頼りになるのは仲川の存在だ。前にスペースがある状態で受けると躊躇なくドリブルで前に運び、全体を押し上げ。観客もそれを分かっていて、仲川が持つだけでホーム側からは歓声、アウェイ側からはブーイングが起きる。横浜もネガティブトランジションの最初の段階で激しいプレスをかけてくるが、徐々に東京が前を向く場面が増えてくる。19分には仲川の右サイドでのキープから安部がハーフスペースに抜け出し、グラウンダーの折り返しにフリーの渡邊がダイレクトで合わせる。シュートは上手くヒットせずに決まらないものの、良い形は間違いなく作れている。
- 34分、東京は自陣でのボール回収から青木が右サイドの仲川へ展開すると、再び仲川がドリブルで前進。一気にアタッキングゾーンまで侵入し、素早く中へ折り返す。するとスプリントで攻め上がっていたディエゴがDFの背後からニアに入ってダイレクトで合わせ、これがゴール右隅に決まって1-1の同点。VARによるオフサイドのチェックにやや時間を要するが、無事にゴール認定。実質仲川とディエゴのたった2人で鮮やかなファストブレイクを完結させ、東京が追い付くことに成功する。
- 更に44分、東京は相手陣内の左サイドタッチライン際で徳元が残したボールを渡邊に繋ぐと、渡邊が左足で上げた鋭いクロスがニアのDFの頭を越して中央のディエゴの頭にピタリ。強烈なヘディングシュートにGK・一森がどうにか反応して左手に当てるが、ボールの勢いがやや勝ったか、ゴール右隅に収まって2-1。高精度クロスにディエゴが合わせるシンプルな形から2発が生まれ、前半のうちに東京が逆転に成功する。
- 前半ATには東京の右CKからニアで森重が合わせたヘディングシュートがクロスバーに当たり、更にこぼれ球を狙った仲川のシュートは一森が鋭い反応を見せてセーブ。これもビッグチャンスだったが、決めきれずに前半終了となった。願わくばリードを広げて折り返したかったが、それでもこの前半を逆転して終えられたのは望外の展開である。後半に横浜が攻勢を強めるのは自明であり、そこでどう耐えるかが鍵となるだろう。
2nd half
- 後半の頭から東京は小泉を下げて松木をインサイドに投入。小泉のパフォーマンスが特段悪いとも思わなかったので、なにかのアクシデントだろうか。南米から帰国したばかりの松木の状態も気がかりではあるが、後半最初の決定機を迎えたのは東京。52分、仲川が右サイドからボックスの幅まで侵入すると、オーバーラップでサポートした長友へパス。フリーな状態で長友がふわりとクロスを上げ、大外で待っていた渡邊が完全にフリーの状態でヘディングシュートを放つが、当たり損ないになり枠を外してしまう。今後予想される展開を考えると、これは勿体ない逸機だ。
- 案の定というべきか、この後は横浜がボールをキープして東京を押し込む時間帯。両サイドのエウベルとヤンマテウスがサイドを崩す場面が増え、東京はどうにか跳ね返すが、攻撃まで手が回らない。そして62分、横浜はサイドに流れたエドゥアルドが入れたクロスに対して中央のロペスがあっさりとフリーになり、ダイレクトで悠々と押し込んで2-2の同点。ここまで耐えてきた東京だが、遂に集中が切れたのか、ロペスをオフサイドにかけ損ねたようだ。これ以上傷口が広がるのを防ぐため、東京は66分に渡邊を下げて塚川を投入し、サイドの守備を強化する。
- 68分、東京はアタッキングゾーンまで攻め込んでのこぼれ球を奪った松木がボールをキープすると、松木の背後からマークについた途中出場のマルコスが顔を押さえながら倒れ込む。インプレーが切れた所でVARのチェックが入り、オンフィールドレビューが行われることに。ビジョンには松木の右肘がマルコスの顔面にヒットする様子が映し出され、横浜サポーターからは大きなブーイングが上がる。清水主審のジャッジは一発レッド。東京の選手たちは猛抗議をするが、VARのチェックはコンプリート済だ。厳しい判定となったが、残り時間は10人でやるしかない。
- 数的不利の東京はシステムを4-4-1に変更。ボランチを2枚にして対処する一方、73分に東とペロッチを投入。74分にはフリーでボールを受けたペロッチがエリア外から強烈なミドルを放ちCKを得るなど、前線の迫力を残して抵抗を見せる。しかし横浜は1人多い立場を利用して後方にカバーを残し、カウンター対策は万全。横浜のワンサイドゲームとなる。82分には中盤でのボール奪取から横浜の速攻が発動し、スルーパスに抜け出したマルコスがGKと1vs1になるが、スウォビィクが即座に距離を詰めてセーブ。こぼれ球に詰めた宮市のシュートも枠の上に外れ、冷や汗ものの場面が続く。
- 89分、横浜は左サイドの宮市が中央へクロスを入れ、これは東京が一度クリアするものの、すかさず右サイドで拾った水沼が再び折り返し。ぽっかりと空いたゴール真正面でフリーで待っていたのはマルコスだった。東京の選手はもはや寄せることもできず、マルコスはボールを一度持ち直す余裕があったほど。シュートを冷静にゴール左隅に突き刺して2-3。土壇場で横浜が再逆転に成功する。横浜サポーターの大歓声が沸き起こり、ビジタースタンドの前へ駆け出したマルコスを中心に歓喜の輪ができる一方、ピッチの上にはがっくりと手を膝にやる東京の選手が目立った。
- 追う展開になった東京は、森重が自ら相手陣内でパスの受け手に回るなど勝負にこだわる姿勢を見せる。ATに入ってからのFKは徳元がゴール前に良いボールを入れるものの、シュートは枠の右へ。終了間際のCKからのパワープレーも実らず、試合終了のホイッスル。横浜が勝点3を積み上げてリーグ戦3連勝を飾り、本日試合が中止となった首位の神戸に勝点で並んでいる。一方、一時リードを奪いながらも数的不利に泣いた東京は、ゴール裏から選手たちに拍手こそ送られたものの、苦しい2連敗となった。
impressions
- 思うように勝点を伸ばせない状況が続く中での、昨季J1リーグ王者を迎えての一戦。横浜が好調であることを考えれば、不利な展開は免れないかと予想された試合だったが、東京が自分たちのストロングポイントを生かしやすい現実的な戦いを選択したことで、スコア上でも内容においても競った試合となった。立ち上がりの失点や松木の退場などが無ければ、良い方に結果が転がっていた可能性は充分にありえたのかもしれない。ただ、間違いなく言えることは、思いがけず巡ってきた得点機、あるいは勝機をしっかりとモノにできる勝負強さが、横浜には間違いなくあったということだ。
- 前半は徳元の転倒という不運な形がきっかけとなり、早々に失点する苦しい入り方となったが、そこからの立て直しは見事だった。これまで積み重ねてきたポゼッションのスタイルにこだわらず、素早く裏のスペースにボールを出してしまう戦略が的中。王者・横浜とのゲームで東京が勝てる部分があるとしたら、それはトランジションの早さしかない、という目論見もあったのだろう。そこに仲川の突破力が加わっての1点目のゴールは実に美しかったし、2点目の渡邊のクロスも絶品だった。
- しかし後半に入り、追加点のチャンスを決められずにいると、横浜があっという間に盛り返してきた。東京の狙いは間違いなく当たっていたが、それは横浜との中盤の競り合いでボールを奪えることが前提で、回収できなければひたすら耐えるしかない。サイドバックが徳元と長友だったからこそ踏ん張れてはいたが、それでも分厚いサイドからの攻撃でロペスの同点弾は防げなかったし、松木の退場以降の時間は、相手をフリーにしないことにリソースの大半を費やした。そして、それもフルタイムは持たなかった。今となっては前半終了間際と後半頭の2つのビッグチャンスでリードを広げられなかったことが、返す返すも悔やまれる。
- 松木の退場は試合の結末に影響する判定だった。おそらく背後からマークについたマルコスを振りほどこうとする過程で右肘が顔面に入ってしまったのだろうと想像するが、映像上の印象は確かに良くなかった。主審の裁量にもよるが、レッドカードが出てもおかしくない場面だったことは確かだろう。5月の川崎フロンターレとの試合では似たような局面で相手選手が退場になって結果的に恩恵を受けるというケースがあったが、VARが絡むジャッジは斯様に良い方にも悪い方にも作用する。差し引きはゼロなのだから、これは受け入れる必要があるだろう。試合後にゴール裏からは審判団に対してブーイングが起きていたが、自分たちにとって不利に働いたからブーイングというのは、ジェントルな態度とは言い難いのではないか。
- 総合的な内容としては、悪くない試合だったと思う。チームとして最終的に目指す形ではないのかもしれないが、裏のスペースで仲川に勝負してもらう使い方は現状では最適解といえるもので、実際に仲川はその要求を全うし、古巣・横浜にとって最大の脅威であり続けた。試合後にビジター席へ挨拶に向かった仲川を横浜サポーターが万雷の拍手で迎えていた光景が、この選手の価値を端的に物語っていた。また、今季初スタメンとなった青木も中盤の多くの局面で顔を出し、潰しだけでなく攻撃の起点にもなっていた。長らくアンカーポジションは東が1人で支えるしかない状況が続いており、4-1-2-3のシステムを継続する上で最大の懸案事項だったが、青木の復調は今後に向けて大きな収穫といえるだろう。
- ただ、手応えや収穫があったからこそ、敗戦だけは避けたかった。松木が退場になるまでは2-2の同点だったわけであり、少なくとも勝点「1」は自分たちの手元にある状況だった。選手たちは最後までよく戦ったと思うし、その頑張りを否定するものではないが、あの横浜相手に互角以上の戦いが出来ていた以上、最低限の勝点「1」は守り抜いてほしかったというのが偽らざる感想である。結果が全てであり、負けたら何も残らないからだ。
- 今日の敗戦により、上位進出を狙うにあたって千載一遇のチャンスともいえた鹿島・神戸・横浜との3連戦は1分2敗に終わり、神戸・横浜との勝点差は「14」まで広がった。まだシーズンが半分残っているとはいえ、リーグ優勝やACL出場権を目標に掲げるのはやや現実的でなくなってきたと言わざるを得ないだろう。残りのシーズンでチームとして何を目指すのか、ターゲットを再設定すべき時かもしれない。まずは次節、リーグ前半戦最後となるガンバ大阪とのアウェイ戦が待っている。下位に苦しむチーム相手だけに、負けられない試合となる。厳しい状況だが、これ以上連敗を伸ばすわけにもいかないだろう。1週間でなんとか立て直してもらいたい。
FC東京 |
2 |
2 | 前半 | 1 |
3 |
横浜F・マリノス |
0 | 後半 | 2 |
|
|
|
ディエゴ オリヴェイラ | 34' | 得点 | 1' | アンデルソン ロペス |
ディエゴ オリヴェイラ | 44' | | 62' | アンデルソン ロペス |
| | | 89' | マルコス ジュニオール |
GK | 27 | ヤクブ スウォビィク | GK | 1 | 一森 純 |
DF | 5 | 長友 佑都 | DF | 27 | 松原 健 |
| 3 | 森重 真人 | | 4 | 畠中 槙之輔 |
| 4 | 木本 恭生 | | 5 | エドゥアルド |
| 17 | 徳元 悠平 | | 2 | 永戸 勝也 |
MF | 16 | 青木 拓矢 | MF | 8 | 喜田 拓也 |
| 37 | 小泉 慶 | | 6 | 渡辺 皓太 |
| 8 | 安部 柊斗 | | 30 | 西村 拓真 |
FW | 39 | 仲川 輝人 | FW | 20 | ヤン マテウス |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 11 | アンデルソン ロペス |
| 11 | 渡邊 凌磨 | | 7 | エウベル |
GK | 41 | 野澤 大志ブランドン | GK | 50 | オビ パウエル オビンナ |
FP | 7 | 松木 玖生 | FP | 10 | マルコス ジュニオール |
| 10 | 東 慶悟 | | 15 | 上島 拓巳 |
| 15 | アダイウトン | | 16 | 藤田 譲瑠チマ |
| 22 | ペロッチ | | 18 | 水沼 宏太 |
| 35 | 塚川 孝輝 | | 23 | 宮市 亮 |
| 44 | エンリケ トレヴィザン | | 28 | 山根 陸 |
| | | 得点 | 1' | | アンデルソン ロペス |
ディエゴ オリヴェイラ | | 34' | 得点 | | | |
ディエゴ オリヴェイラ | | 44' | 得点 | | | |
小泉 慶 | | HT | 交代 | | | |
松木 玖生 | | | |
仲川 輝人 | | 57' | 警告 | | | |
| | | 得点 | 62' | | アンデルソン ロペス |
| | | 交代 | 64' | | エドゥアルド |
| | | 上島 拓巳 |
| | | 西村 拓真 |
| | | マルコス ジュニオール |
渡邊 凌磨 | | 66' | 交代 | | | |
塚川 孝輝 | | | |
松木 玖生 | | 69' | 退場 | | | |
青木 拓矢 | | 73' | 交代 | | | |
東 慶悟 | | | |
ディエゴ オリヴェイラ | | | |
ペロッチ | | | |
| | | 交代 | 77' | | 渡辺 皓太 |
| | | 藤田 譲瑠チマ |
| | | 交代 | 81' | | エウベル |
| | | 宮市 亮 |
| | | ヤン マテウス |
| | | 水沼 宏太 |
仲川 輝人 | | 84' | 交代 | | | |
アダイウトン | | | |
| | | 得点 | 89' | | マルコス ジュニオール |
安部 柊斗 | | 90+9' | 警告 | | | |