2022.4.10 (日)
2022 明治安田生命J1リーグ 第8節
FC東京 × 浦和レッズ
( 味の素スタジアム,14:00 )
introduction
- 4/2(土)の試合を皮切りに、今月の東京は中2,3日での7連戦という難しい日程が組まれている。この週末はその連戦の3試合目になるが、次のミッドウィークに行われるのがルヴァンカップの試合ということを考えれば、リーグ3連戦の3戦目となる今日はひとつの区切りといえるだろう。
- この1週間で横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸と戦った東京が今日ホームに迎える相手は、難敵の浦和レッズだ。この3チームはいずれも今季のACL出場チームであり、即ち昨季のリーグ戦上位チームでもある。チームの「現在地」を把握する上では重要な1週間だ。家庭の事情でアウェイゲームや平日ナイトゲームの観戦が少し難しい自分は、横浜M・神戸との試合はいずれもDAZN観戦にせざるを得なかったが、この試合は久しぶりのデーゲームということもあり、味スタへと向かった。
- 味スタは4月に入ってから入場者数の上限の設定が解除されており、フルキャパシティまで入れることが可能になっている。家族連れが来場しやすい日曜日のデーゲームで、しかも対戦カードが「東京×浦和」とくれば、新型コロナウイルスの感染拡大以前であれば30,000人は軽く入っていたであろうと思われるが、残念ながら今日はほぼ全席種のチケットが売れ残り、当日券が出ている状況。客足がスタジアムから遠のいたという厳しい現実を実感させられるが、それでもたくさんの観客(のちに22,429人と発表)が集まったスタンドの賑わいには、少し懐かしさすら覚えてしまう。この週末の関東地方は季節が一気に進んだかのような暖かさで、今日に関しては最高気温が25℃とも聞く。観戦者にとっては絶好の行楽日和だが、選手にとっては少し暑さすら感じそうなコンディションかもしれない。
- 東京は前々節の横浜Mとのアウェイゲームでは1-2と敗れたが、ミッドウィークに行われた前節の神戸とのホームゲームは3-1の逆転勝利。敗戦を引きずらずに勝点3を積み上げることができ、まずはひと安心といったところである。今節は横浜M戦での退場処分に伴う出場停止が明けた松木が早速のスタメン復帰。一方、神戸戦で途中交代となった木本がベンチからも外れている。アダイウトンがベンチスタートとなっており、交代カードの切り方も試合の鍵を握りそうだ。
- 対する浦和は、ACL出場の関係で既に9試合を消化しているが、2勝3分4敗と黒星が先行するシーズン。ロドリゲス監督2年目のシーズンとなり結果も求められる1年だが、ここまではあまり順調とは言い難い状況だ。とはいえ、昨年に続く大型補強で戦力は充実しており、特に前線にはスウェーデン出身のモーベルグ、オランダ出身のシャルクという外国籍のアタッカーを2人獲得している。彼らが脅威であることは間違いないだろう。浦和はこの週末の試合を終えた後にタイへ飛び、ACLのグループステージを集中開催で戦う予定であり、気持ちよく勝って日本を発ちたいはずだ。
1st half
- キックオフ時点での立ち位置を確認すると、東京はこれまで右サイドのアタッカーで試合に出ていた紺野が、今日は左サイドにいる。左利きの紺野を左で使うということは、より縦の突破を意識した起用なのだろう。対する浦和は4-2-3-1のシステム。2列目の両サイドにはモーベルグと小泉がいて、少なくともどちらかは中央寄りの立ち位置を意識しながら、ユニットとなるサイドバック(酒井と明本)の攻撃参加を促すというアグレッシブな形だ。
- 立ち上がりの攻防が一段落してからの20分、浦和は右サイドのモーベルグが中に攻め込み、ユンカーとのワンツーでPA内に割って入ろうとするが、東京が2人がかりで挟み込んでピンチの芽を摘む。しかし直後に再び浦和のポゼッションを許すと、今度は左から中へポジションを移していた小泉が起点となってPA内に攻め込み、ゴール至近のこぼれ球に反応したモーベルグが押し込んでゴールネットを揺らす。やられた・・・と思ったが、副審がオフサイドフラッグを揚げてノーゴール。次にVARチェックが入り試合は中断。主審の長い交信が続き、観客の側からすると不安が増すところだが、幸いにもファイナルジャッジはやはりオフサイド。ホッと胸をなでおろすが、やはりモーベルグと小泉のケアには悩まされるところだ。
- その後も浦和が押し気味に試合を進める時間帯が続く。33分にはモーベルグを起点にPA内まで攻め込まれ、ゴール至近で再びこぼれ球を江坂がバイシクルで狙うが、シュートは枠の左。ここも1点もののチャンスだった。
- なかなかチャンスを作れない東京は、40分に右サイドでボールを回収した永井がドリブルを開始すると、得意の加速で縦へ突破。一気にハーフスペースまで前進し、グラウンダーのクロスにディエゴが合わせようとするが、肝心のシュートがヒットせず、ゴールを脅かすには至らない。
- 42分、浦和は連動したプレスで東京の後方でのパス回しに圧力をかけると、スウォビィクが苦し紛れのキックで逃げたところをすかさず拾い、左サイドから攻め込んで最後はゴール正面のユンカーにボールが入る。しかしユンカーのシュートもヒットせずに枠外へ外れ、東京は命拾い。これが前半最後のチャンスとなり、0-0のままハーフタイムに入る。東京は全く太刀打ちできないという内容ではないが、サイドを押し込まれて息苦しさを抱えたままでの折り返し。無失点なのは救いだが、後半にどうなるか。
2nd half
- HT明けの東京は紺野を下げてアダイウトンを投入。紺野が特段悪いとも思わなかったが、前半に対面の酒井に押し込まれる場面もあったので、戦術的な意図もありそうだが、区切りの良いところでスパッと代えたのでタイムシェアが目的かもしれない。どうにかサイドを押し返したい。
- 序盤は互いにアタッキングゾーンまで攻め込むものの、ビッグチャンスといえるような場面は無く、膠着した展開。こうなると交代カードの使い方が重要となる。64分、両チームが同時に動く。東京は松木を下げて中村を投入。中村が右SBに入る代わりに渡邊が一気に2列目までポジションを上げ、システムも4-2-3-1に変更する。ここのところパフォーマンスを上げている渡邊の活躍を期待してのシステム変更だろうか。一方の浦和はモーベルグを下げて松尾を左のアタッカーに投入。松尾は浦和の下部組織出身で、今季横浜FCから古巣に戻ってきたドリブラータイプの選手だ。
- 71分、浦和はゴールほぼ正面の角度で直接FKを獲得。キッカーの岩尾がゴール右上隅を狙った見事なキックを見せるが、これはスウォビィクが横っ飛びで弾き出す好セーブで凌ぐ。浦和の押す時間が続き、どうにか耐えたい東京だが、この後の流れの場面でアクシデント発生。こぼれ球の競り合いで相手と交錯した渡邊が倒れ込み、そのまま立ち上がることができず。渡邊は三田との交代を余儀なくされる。ここでのアクシデントは手痛い。
- 77分、東京の自陣でのボールロストから押し込まれ、最後は途中出場の松尾にボールが渡り決定的なシュートを許す。1点もののビッグチャンスだったが、シュートは僅かにゴールマウスの右に外れ、スタンドからは大きな嘆息が漏れる。ここまでは明らかに浦和が押す展開だ。
- 一方の東京も終盤は至るところにスペースが出来てきたこともあり、ロングパスを使って手数をかけずに前線へボールを供給する。83分には中盤での安部のボール奪取から左サイドのアダイウトンへ素早くつなぎ、最後はアダイウトンがカットインからファーサイドを巻いて狙う形のミドルシュート。絶妙にコントロールされた弾道のボールがゴールへ吸い込まれていくように見えたが、GK・西川が僅かに触れたボールはクロスバーを直撃。スタンドからはこの日一番のどよめきが起きる。
- 残った時間はほぼ浦和がボールを支配。81分に小泉に代わってJリーグデビューとなったシャルクが前線でユンカーと並ぶ形となり、東京にとっては恐怖でしかなかったが、決定機は作らせずに試合終了。両者守備が最後まで集中を切らさずに持ちこたえ、0-0のスコアレスドローとなった。
impressions
- 攻撃の分厚さという点では浦和が上回った印象。前述したとおり、小泉とモーベルグの2人がインサイド寄りに立つことでボールを引き出しやすくしていた。東京からすれば、中盤と最終ラインの間の手薄なスペースにボールを入れられることになるので、誰かがスライドして見なければならない。それ自体はどうにか対処できていたが、浦和がサイドバックまで加勢して押し込まれると対応しきれなくなってどうしても全体が引かざるを得ず、必然的に相手のゴールが遠くなってしまった。
- 後半は浦和が松尾を投入して更にサイドの攻撃を強化してきたが、同じタイミングで東京が中村を右SBに投入していたこともあり、どうにか持ちこたえた感はあった。あのまま渡邊を右SBで使っていたらどのような結末を迎えていたかは神のみぞ知るところだが、手を打った上で無失点という結果を得られたのだから悪いことではない。理想としてはもっと高い位置からプレスではめていきたかったのだろうが、思い通りにいかない場合でもしっかりと対処することができたわけであり、守備に関してはある程度手応えを得られる内容だったと思う。
- 攻撃については、率直な印象として「迫力不足」の感は否めなかった。連動したパスで崩すシーンが無かったわけではないが、記憶に残るようなチャンスは個人での打開を起点としたものに限られた。全体が押し込まれていた影響でそういう選択をせざるを得なかったとも言えるが、今季になって向上したロングパスの精度は悪くなかった。無理によそゆきのサッカーをして不用意なボールロストをするよりは、現実的な選択をしたということだろう。これは決して悪いことではない。「やりたいこと」と「やれること」は分けて考えるべきで、今日の東京は「やれること」を忠実に続けていたと思う。唯一残念なのは、ここのところ好調であった渡邊がアクシデントで交代を余儀なくされたことだ。どうか軽傷であることを祈りたい。
- シーズン日程が発表された段階から、横浜M・神戸・浦和との3連戦となるこの1週間が最初の試金石になるだろうと見ていたが、終わってみればこの3連戦は1勝1分1敗で終了した。これが良いのか悪いのかは人によって評価の分かれるところだと思うが、リーグタイトルが義務付けられているシーズンというわけでもないのだし、個人的には想定内の結果だと思っている。結果よりも重要なのは、この連戦で得た経験を今後のチームビルディングに生かしていくことだ。来週からは引き続きルヴァンカップとリーグ戦が並行して進む形となるので、若手選手や出場機会の少ない選手を積極的に起用することで戦力の底上げがなされることに期待したい。
FC東京 |
0 |
0 | 前半 | 0 |
0 |
浦和レッズ |
0 | 後半 | 0 |
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| | 得点 | | |
GK | 24 | ヤクブ スウォビィク | GK | 1 | 西川 周作 |
DF | 23 | 渡邊 凌磨 | DF | 2 | 酒井 宏樹 |
| 3 | 森重 真人 | | 4 | 岩波 拓也 |
| 50 | エンリケ トレヴィザン | | 28 | アレクサンダー ショルツ |
| 5 | 長友 佑都 | | 15 | 明本 考浩 |
MF | 16 | 青木 拓矢 | MF | 19 | 岩尾 憲 |
| 31 | 安部 柊斗 | | 22 | 柴戸 海 |
| 44 | 松木 玖生 | | 10 | ダヴィド モーベルグ |
FW | 11 | 永井 謙佑 | | 33 | 江坂 任 |
| 9 | ディエゴ オリヴェイラ | | 8 | 小泉 佳穂 |
| 17 | 紺野 和也 | FW | 7 | キャスパー ユンカー |
GK | 13 | 波多野 豪 | GK | 12 | 鈴木 彩艶 |
FP | 6 | 小川 諒也 | FP | 6 | 馬渡 和彰 |
| 7 | 三田 啓貴 | | 11 | 松尾 佑介 |
| 10 | 東 慶悟 | | 17 | アレックス シャルク |
| 15 | アダイウトン | | 20 | 知念 哲矢 |
| 19 | 山下 敬大 | | 21 | 大久保 智明 |
| 37 | 中村 帆高 | | 25 | 安居 海渡 |
永井 謙佑 | | 32' | 警告 | | | |
紺野 和也 | | HT | 交代 | | | |
アダイウトン | | | |
松木 玖生 | | 64' | 交代 | 64' | | ダヴィド モーベルグ |
中村 帆高 | | | 松尾 佑介 |
渡邊 凌磨 | | 74' | 交代 | | | |
三田 啓貴 | | | |
永井 謙佑 | | 81' | 交代 | 81' | | 小泉 佳穂 |
山下 敬大 | | | アレックス シャルク |