今日は平日開催のJ2を観に行く。新型コロナウイルスの影響で昨季は一度も行けなかった、町田のホームゲームだ。野津田に行くのは実に1年半ぶり。平時であればそれなりの頻度で足を運んでいるはずなので、ちょっとした懐かしさもあって仕事は快調(笑)。味スタでの試合時と同様に仕事を早めに切り上げ、多摩センターから無料のシャトルバスに乗り込む。多摩センターから野津田へのアクセスはシーズンによって流動的な印象があり、一時は路線バスを使わないといけない時期もあったので、無料シャトルが出ているというのは「出血大サービス」という感じだ。乗客が自分を含めてたったの3人しかいなかったので、採算が取れるのかはちょっと怪しいが、こういうサービスがある以上は恩恵をしっかり受けておく。15分程度で野津田に到着。フードコートも本来ならば混雑必至なのだが、感染症や平日開催の影響もあってか、至って長閑な雰囲気だ。一方で、バック側に建築中の新スタンドはほぼ完成しており、5月にいよいよオープン予定。上層席の角度はメインスタンドよりも良さそうなので楽しみだ。試合は、現在勝点「11」の町田が、勝点「22」と好調の琉球を迎えての一戦。町田は今季ホーム・野津田で4試合を戦っているが、2分2敗と未だに白星が無い。アウェイにも応援に行きづらい時勢なだけに、そろそろホームのサポーターに勝利を届けたいところだろう。前節はアウェイで長崎を3-0で下しており、良い流れをこの試合にも持ち込めるかが重要だ。一方の琉球はリーグ戦8試合を終えて7勝1分とほぼ取りこぼしがなく、同じ勝点の新潟と並んで首位グループを快走中。特にここまでの失点はわずか「3」で、樋口監督の築き上げた手堅い守備が機能したシーズンとなっている。町田にとっては怖い相手だ。
何となく琉球が押し気味に進めるのだろうか・・・という漠然とした予想をしながら観始めた前半だったが、どうやら様子が違うことに気づくのに多くの時間は掛からなかった。何度か琉球が前線の個の力でシュートに持ち込む場面は作るものの、相手からボールを奪った後の切り替えの速さでは町田の方が上。琉球はちょっと後ろが重たく、DAZNのハイライトで見るような速攻がなかなか発動しない。一方の町田は中島とアーリアの前線2人が縦の関係を保ちながら片方が下りてきて中盤に顔を出し、後ろからのボールを引き出して流れを作っていく。25分、町田は左サイドの組み立てから平戸のミドルシュートでCKを得ると、このCKの流れから右サイドで受けた三鬼が相手選手にマークされながらも難しい体勢でクロス。するとこれがゴール前で攻め残っていた高橋の頭にピタリと合い、強烈なヘディングが決まって1-0。今季新加入の高橋の移籍後初ゴールでホームの町田がリードする。更に35分、琉球の右サイドからのスローインに対して町田が強烈なプレスをかけると、そのこぼれ球が転々と中央エリアに転がってフリーだった平戸のもとへ。平戸のフィニッシュはGK・田口が辛うじて弾くものの、正面にこぼれたところをすかさずアーリアが押し込んで2-0。町田が更にリードを広げる。琉球は今季初の複数失点だ。その後も町田の攻勢が続き、予想外の展開に内心驚きつつ前半終了。もちろん町田の守備・攻撃の連動が素晴らしいのだが、琉球のエンジンがなかなか掛からないのも気がかりの内容だ。HT明けの琉球は左サイドの清武を清水にスイッチ。少し動きの無いところにテコ入れをして巻き返しを狙う。50分、町田は右サイドに開いてボールを受けたアーリアが、ハーフスペースを狙う動き出しを見せた中島にグラウンダーの美しいスルーパス。田口が出てきて圧力を掛ける中、中島がマイナス気味にダイレクトで折り返すと、中央に「どフリー」で詰めていた平戸が悠々と押し込んで3-0。拍手を贈る以上のことができないのがもどかしいレベルの鮮やかな崩し。まだ時計は40分残っているが、勝敗を決定づけるインパクトの追加点だ。このまま終わるわけにいかない琉球も前線の選手を中心に交代カードを切っていく。終盤には上原と赤嶺の沖縄出身ツインタワーを前線に並べて攻め立てたが、角度の無いボールに対しては町田のDFラインが冷静に跳ね返し続けた。結局、3-0のまま試合終了。町田が今季無敗だった琉球に土をつけ、野津田での今季初勝利を飾った。
ここまでの両チームの順位が嘘のように感じる、町田の圧勝だった。勝因はいくつか挙げられるだろうが、最大のポイントはやはり切り替えの早さだろう。とにかく自陣でボールを奪った後に中島とアーリアが「いい感じのところ」にちゃんと顔を出してくれる。そこが起点となって攻撃の形に繋がるので、町田は全体の押し上げがとてもスムーズにできていた。前半の得点はセットプレイやハイプレスによって生まれたものだったが、それも全体の押し上げが効いていたからこそであり、目論見どおりに進んだ試合だったのではないかと思う。後半の3点目はアーリア・中島の技術と連携が凝縮されたもの。たった2本のパスで琉球のDFラインを切り裂き、試合を決めてしまった。こういうイマジネーションを引き出せるあたり、ポポヴィッチ監督の手腕はさすがだなと感じる。守備も堅かった。深津・高橋のCBコンビは正面から入ってくるボールを淡々と跳ね返していたし、サイドからの崩しに対してもしっかり蓋を出来ていた。特にSBの奥山は広範囲にわたるカバーを見せ、決定的な崩壊はほとんど無かった。右SBの三鬼も攻撃で先制点のお膳立てをしたし、DFラインも陰ながら大きな仕事をしたと思う。強いて課題を挙げるならば、中島とアーリアを下げた72分以降に、これといった見せ場を作れなかったことくらいか。守備では高い位置からボールを追っていたが、攻撃時にパスを引き出す動きは少し物足りなかった。更なる選手層の充実を図るのならば改善の余地がありそうだ。一方の琉球は9試合目にして今季初の黒星。町田と対照的に、全体の押し上げに苦労して前線が孤立してしまった。立ち上がりこそ多少は形を作れていたが、町田の攻撃の方が明らかに手数が多く、何より効いていた。そんな中で先制点を許し、浮き足立ったところを更に畳みかけられ、バタバタと崩れてしまった印象。ここまで8試合で3失点だった守備がたったの50分間で同じ3失点を喫するというのは、少なからずショックだったのではないかと思う。ただ、後半の選手交代も的外れではなく、状況に応じたプランというのは講じられているように見えた。なにか大切にしてきたものが壊れてしまった、というような敗戦ではないはず。こういう敗戦の後で一番大事なのはとにかく「切り替える」の1点に尽きる。町田にとっても琉球にとってもターニングポイントとなりえる結果の一戦だっただけに、次節以降の両チームの戦績にどのような影響が出てくるか、注目して見ていきたい。