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2021.1.4 (月)
2020 Jリーグ YBCルヴァンカップ 決勝
柏レイソル × FC東京
( 国立競技場,14:35 )

激動の2020年シーズン、国内サッカー締め括りとなるルヴァンカップ決勝の日がやってきた。J1リーグ最終戦から2週間、対戦する柏と東京にとっては、越年してのシーズン最終戦となる。当初は11/7に開催が予定されていたが、柏で新型コロナウイルスの集団感染が発生したため、試合は延期に。2020年内には振替日程の調整がつかず、このタイミングでの開催となった。延期が決まる前にチケットが既に完売していたため、国立競技場には24,219人の観客が来場。足下では都内だけでも連日1,000人近い感染者数が報告されており、東京近隣の1都3県の知事が緊急事態宣言を国に要請するといった緊迫情勢となっているが、それでも開催にこぎつけることができて良かった。試合ができること、そして試合を観られることに感謝しなければならない。柏の黄色、東京の青赤で綺麗に分かれたスタンドは、歓声こそ無いものの、いつものカップファイナルらしい趣き。東京のゴール裏は、リーグ戦では無かった太鼓と手拍子の応援で雰囲気を盛り上げる。両チームのスタジアムDJによる選手紹介も、当事者として見ると感動ものだ。東京の場合、2009年決勝時の煽りVに使われていた「泣くな東京」「笑えよ東京」「俺たちがいるじゃないか」のフレーズが今回の煽りVでも使われていて、もう泣きそうになる(笑)。東京はACLで負傷離脱したディエゴが残念ながら間に合わずメンバー外。他はほぼ予想どおりのラインナップだ。柏はJリーグMVPのオルンガを筆頭に、クリスティアーノ・江坂・瀬川の強烈な2列目が予想どおりのスタメン。ここを抑えなければ勝利はない。

前半は両チームともリスクを回避しながら攻める立ち上がりとなるが、試合が動いたのは15分。左サイドでの競り合いのこぼれ球をレアンドロが拾い、ドリブルでマークを振り切りながらゴール正面へカットイン。レアンドロがそのまま右足でフィニッシュに持ち込むと、これがゴール右隅に決まって0-1。この大一番ながらたった1人での打開でゴールをこじ開け、東京がリードを奪う。東京は中盤の守備がしっかり効いており、柏にオルンガに出すまでの起点を簡単に作らせず。たまに中盤を省略して直接オルンガにボールが渡るが、マークに付く渡辺が激しい当たりで対応して仕事をさせない。しかし39分、柏が中盤での大谷の気の利いた持ち出しからオルンガのポストを経由して江坂のフィニッシュに繋げる場面を作ると、ここから柏の流れに。45分、クリスティアーノの左CKにオルンガが競ったボールを波多野が弾ききれず、こぼれ球をすかさず瀬川が押し込んで1-1。ボールの落下点に入っていた波多野だが、巧く身体を入れてきた大谷に押されて体勢を崩してしまった。この時間帯にセットプレイでの失点は痛い。同点で前半を終える。後半に入ると、東京のボールロストを柏が多く拾って攻める展開。東京も63分にゴール正面で得た直接FKをレアンドロが狙うが、ゴール右上隅のポストに弾かれて決まらず。どうにか互角にやれているが、このままだとジリ貧だ。67分、長谷川監督が先に動く。アダイウトンと三田を投入し、システムを4-2-3-1に変更。この効果はすぐに表れた。71分に永井、72分にアダイウトンが共に左サイドを崩してチャンスを作ると、74分に自陣のロングボールの相手クリアを永井が競り、ゴール正面にこぼれた所へ猛然と走りこんだアダイウトンのシュートがゴール右隅に決まって1-2。柏の守護神である金承奎も反応できない、まさに一瞬の出来事だった。勝ち越しを許した柏は直後の3枚替えで総攻撃。呉屋を前線に据えた4-4-2にシステム変更し、フィジカルで押し込んでくる。東京は早くも撤退戦に切り替え、自陣で守る時間だ。84分にクリスティアーノ、85分に呉屋と立て続けにチャンスを作られるが、いずれもゴールマウスは割らせず。ここはもう理屈抜きである。ATは6分と長めにとられたが、ここも慌てずに耐え抜き、遂にタイムアップのホイッスル。東京の選手たちが次々にピッチに崩れ落ちた。嬉しさと脱力感が同時に押し寄せた。喜びを歓声に代えることができないのは残念だが、天を仰ぎ、大きく息をついた。遂にやったのだ。

長谷川監督3年目のシーズンにして、遂に悲願のタイトルに手が届いた。リーグカップでは2009年以来11年ぶり、国内3大タイトルでは、2011年の天皇杯以来9年ぶりの頂点である。この大会に限ればベスト8からの登場だったため、優勝までのプロセスはたった3試合しかなかったが、それでも結果を最優先する戦い方がこの3試合に凝縮されていたと思う。今日に関しては、やはりオルンガへのボールの出どころを封じることができたのが大きかった。その要因こそ、中盤の森重・東・安部のトライアングルによる徹底した起点潰しではないだろうか。ACLから採用した森重のアンカー起用について、過去に見てきた経験から自分は少し懐疑的だったのだが、今日の戦いを観て合点がいった。まさに今日の柏のようなチーム相手にこそぴったり当てはまる戦術だったのだ。オルンガに入れられた場面でも、渡辺が前半早々に肩を痛めながら激しく対応して仕事をさせなかったし、オマリも良くサポートしていた。攻撃では、ACLからの帰国以降温存していたレアンドロがスーパーな活躍。たった1人でゴールを切り開き、大きな先制点で試合に優位性をもたらし、MVPにも選出された。決勝のような堅い試合ではやはり「個」の力は重要で、その才能をいかんなく発揮。チームにとって欠かせない存在であることを証明した。前半終了間際にセットプレイで追いつかれたのは痛かったが、先の展開が読めない後半、長谷川監督から先に動いたのも勝因の1つだろう。「膠着した展開で先に動くのは悪手」と云われるが、徐々に柏がリズムを掴んでいた中で、すかさず2枚替え&システム変更を敢行。縦に速いサッカーに切り替え、投入したばかりのアダイウトンが勝ち越し点の大仕事をやってのけた。シーズン最後にして、長谷川監督の「勝負勘」が冴え渡った。この3年間で培ってきたものが最後に花開いた瞬間だったと思う。一部の主力選手がピッチに立てなかったのは残念だったが、シーズンの締め括りにこのような形で笑って終われるのは本当に良かったし、カップを掲げてスタンドに挨拶する選手たちの姿を誇らしく感じた。オフは短いが、チームの方々にはゆっくり休んでほしい。来季の更なる飛躍に期待が膨らむシーズン最終戦だった。

柏レイソル 1 1前半1 2 FC東京
0後半1
瀬川 祐輔45'得点16'レアンドロ
74'アダイウトン

GK 17金 承奎 GK 13波多野 豪
DF 24川口 尚紀 DF 37中村 帆高
25大南 拓磨 4渡辺 剛
50山下 達也 32ジョアン オマリ
4古賀 太陽 6小川 諒也
MF 8ヒシャルジソン MF 3森重 真人
7大谷 秀和 10東 慶悟
9クリスティアーノ 31安部 柊斗
10江坂 任 FW 24原 大智
18瀬川 祐輔 11永井 謙佑
FW 14オルンガ 20レアンドロ

GK 16滝本 晴彦 GK 1児玉 剛
FP 15染谷 悠太 FP 5丹羽 大輝
19呉屋 大翔 7三田 啓貴
20三丸 拡 15アダイウトン
27三原 雅俊 28内田 宅哉
33仲間 隼斗 38紺野 和也
39神谷 優太 44品田 愛斗

ネルシーニョ 長谷川 健太

得点16'レアンドロ
瀬川 祐輔45'得点
交代67'原 大智
三田 啓貴
東 慶悟
アダイウトン
得点74'アダイウトン
瀬川 祐輔78'交代
神谷 優太
江坂 任
呉屋 大翔
大谷 秀和
三原 雅俊
ヒシャルジソン86'交代
仲間 隼斗
交代90'永井 謙佑
内田 宅哉

福島 孝一郎

24,219人