現在、リーグ戦で4試合勝利から遠ざかっている東京。前回のホームゲームでは鳥栖に今季初勝利を献上する悔しい敗戦だっただけに、今度こそホームでの勝利を観たい。前節、アウェイでのC大阪戦は0-0のスコアレスドロー。システムをシーズン当初の4-1-2-3に戻し、守備ではある程度の手ごたえを得られたようだ。また、長らく控えGKだった波多野がJ1デビューを飾り、いきなり無失点を達成。今季もスタメンでゴールマウスを守る。また、今週は再び移籍マーケットに動きがあり、室屋がドイツ2部のハノーファーへ移籍することが決定。この試合が東京でのラストマッチとなった。右サイドの要である室屋が抜けるのは手痛いが、まずはこの試合で勝ち切りたい。対戦相手は現在4位の名古屋。相手がフィッカデンティ体制になってからはこれが初対戦だ。元・東京の指揮官が率いるチームであり、守備重視の戦いになることは想像に難くないが、前節は浦和に大量6得点で圧勝しており、特にその試合でハットトリックを達成した前田に注意が必要だ。
試合は事前の想定どおり、互いに守備を強く意識した手堅い入り方。4-2-3-1で望んできた名古屋は、トップ下のシャビエルが左右に動いてボールを引き出そうとする。東京はアンカーの髙萩の両脇にスペースがあるので、そこを狙いたいのだろう。ただ、東京の守備もそれを分かっていて早め早めのプレス。局面によってはディエゴが猛烈なプレスバックをかけるなどの貢献もあり、チャンスを作らせない。東京は速攻で対応したいが、やはり名古屋の4-4ブロックのセットが早く、ラフなボールを裏に蹴って永井を走らせるスタイルで様子を見る。時間が経つと、徐々に東京が押し込む流れに。特に髙萩がリスクを冒して相手陣内の深い位置までサポートに行く場面が多くなる。すると33分、その髙萩が相手PA内まで侵入した流れから、一度跳ね返されたボールを室屋が奪い返すと、安部→髙萩→永井と短いパスを素早く繋ぎ、最後はPA内左でパスを受けたレアンドロがDFの間を通すシュートをゴール右隅に決めて1-0。中盤の選手がリスク覚悟で攻め込んだ流れからゴールをこじ開けることに成功する。その後は名古屋にやや攻め込まれる場面もあったが、前田とマテウスの両翼の仕掛けも距離を詰めてしっかりと対応し、全く仕事をさせずに前半を終える。後半、名古屋は山﨑を投入してシステムを4-4-2に変更。山﨑の高さを生かしたポストプレイで、前半存在感の薄かった1トップの金崎をより生かそうとする。しかし、逆にシステム変更で若干バタつきの見られる名古屋に対して東京の速攻が生きる形に。56分には速攻からPA内に侵入した安部の落としをレアンドロがミドルシュート。ランゲラックのスーパーセーブで追加点はならないが、安部とレアンドロは呼吸が合っている感じで、見ていて面白い。名古屋は55分に左SBを吉田から太田に交替。古巣対決となった太田のクロスを生かして飛び道具を増やす名古屋だが、東京も渡辺と森重のコンビがしぶとく跳ね返し続ける。69分、ここまで体力の限り前線のプレスで相手に圧力を与え続けていた永井が交代となり、若干名古屋にボールを運ばせる場面は増えてきたが、その分東京にも速攻のチャンスが巡ってくる。82分にはレアンドロと対面だった成瀬が2枚目の警告で退場。後半ATには速攻から途中出場の原がドリブルで運び、ラストパスを受けたアダイウトンが相手PA内で石田のハンドリングを誘い、PKを獲得する。交代済みのディエゴの代わりにキッカーを務めたアダイウトンのキックはコースが甘く、ランゲラックに弾かれてしまうものの、直後に試合終了。東京が前半の1点をしぶとく守り切り、クリーンシートで5試合ぶりのリーグ戦勝利を挙げることができた。
最後まで守備が安定していた試合だった。1点差ではあったが、比較的安心して観ていられる試合だったように思う。前半に関しては、名古屋の2列目を徹底的に潰して仕事させず、前田とシャビエルをHTでの交代に追いやった。相手のフィッカデンティ監督も早い決断で後半から2トップに変更し、更には太田を投入してクロスから空中戦でのバトルを意図的に増やしてきたが、集中して跳ね返すことができていた。J1での味スタデビューとなった波多野も、ハイボールの対応からミドルシュートのセーブまで終始安定したパフォーマンスで、2試合連続の無失点に大きく貢献。このまま正GKの座を林から奪ってもおかしくないレベルだった。4-1-2-3にシステムを戻してから2試合目になるが、先頭の永井からしっかりとプレスをかけに行くことができており、それが相手に安易に組み立てさせない効果を生んでいる。泥臭い仕事だが、今日の永井のランニングは攻守に効きまくっていた。攻撃に関しては、スコアレス上等で自陣を固める名古屋のブロックを相手に、リスクを承知で人数をかけて押し込み、その時間帯で1点を取れたことが大きい。ファストブレイク一辺倒にならず、相手が待っている状態からでも点を取れることを証明したのは今後に向けて大きな糧になったのではないかと思う。強いて課題を挙げるならば、追加点を奪えなかったこと。ディエゴをサイドに置いているので、単純にゴールから遠く、以前のような破壊力は出せていない。3トップ時のディエゴは守備での貢献が多いので、そこは目を瞑るしかないだろう。今日はレアンドロの技術で1点奪えた感があるが、そこだけに依存するわけにもいかない。安部をはじめ、中盤の選手のフィニッシュ精度向上が望まれるところ。後半ATのアダイウトンのPKも、得失点差を考えれば決めておきたかった。勝てる試合では、得失点差についても意識していきたいところだ。最後に、室屋にとって東京でのラストマッチを飾れたのは本当に良かった。今日の試合に関しては名古屋が良く守っていたこともあり、室屋のサイド突破はほとんど許してもらえなかったが、そこに頼らなくても勝てたという事実が、今後の希望になると思う。室屋が抜けた穴を埋めるのは難しいが、セレモニーの際に室屋が言及したように、若手の台頭も起こりつつある。現実的には移籍での補強などもフロントには検討してほしいが、そこに頼りすぎず、まずは若手選手に期待したい。そして何より、室屋のドイツでの成功を祈りたい。次節は中3日でアウェイ・広島戦だ。いよいよ厳しい連戦が本格化する。