フットボールのある週末が、ようやく帰ってきた。2月に行われたJ1リーグ開幕節の後、新型コロナウイルス・COVID-19の世界的な感染拡大の影響を受け、Jリーグだけでなく、国内の各種スポーツ大会は軒並み開催延期や中止の対応をとることになった。春先に見込まれたリーグ戦再開の日程も、4月に発出された緊急事態宣言の影響を受けて再延期。5月末での緊急事態宣言の解除を受け、ようやくJリーグも7月からの再開に踏み切ることができた。感染拡大防止のためにリモートマッチ(無観客試合)から再開したリーグ戦も、上限を5,000人とする観客を入れての試合に制限を緩和。東京は今節が再開後に初めてホーム・味スタで観客を入れての試合となる。入場口での体温測定、ソーシャルディスタンスを確保した全席指定のチケット販売など、中断前と勝手は異なるものの、試合進行の段取りはいつもどおり。少し安心感を覚える。リーグ再開後の東京は3試合を消化して2勝1敗と悪くない滑り出しだが、今節の相手は、リーグ戦で2014年シーズン以来5年以上勝利の無い浦和。感染拡大防止のためにビジターサポーターの来場を禁止していることもあり、味スタのビジター席を占領する浦和の大サポーターの姿は無いが、難しい相手であることには変わりない。また、ロシアのFCロストフへの移籍が発表された橋本は東京のユニフォームを着て最後の試合。しっかりと目に焼き付けておきたい。
試合の状況に応じて4-1-2-3と4-4-2を併用している今季の東京だが、今日の最初の並びは4-1-2-3。前節の横浜M戦で長期離脱から戻ってきた永井が3トップの頂点に入り、ディエゴが右、レアンドロが左。試合の立ち上がりから、浦和がボールを持つと永井が猛烈な勢いで最前線からチェイスをかけ、浦和に圧力をかける。中盤インサイドでスタメンの東と安部も豊富な運動量でボールを追い、中央で簡単には起点を作らせない構えだ。今季は4バックにトライしている浦和だが、最大の脅威はやはり中央で起点となる興梠。東京の守備陣も相当に気を遣っている様子が窺えるが、23分にはその興梠にボールを入れさせたところから杉本にシュートチャンスを許すなど、ほぼ確実にチャンスを作ってくる。攻撃ではディエゴとレアンドロの閃きにやや頼る場面が多く、サイドからじわじわと中央を侵食したい東京だが、その粘りが実ったのは前半終了間際の45分。DFラインからのロングフィードを室屋が右サイドの1つ中のレーンで受け、ハーフスペースまで侵入してから折り返すと、中央で待っていたディエゴが腹でボールを押し込み、東京が1点先制。最高の時間帯でのゴールにより、東京が1点リードで前半を終える。後半に入ると、浦和はあまりチャンスを作れていなかった左サイドに関根を投入してテコ入れ。更に57分にはレオナルドとマルティノスを投入し、前線の顔ぶれを代えてくる。後半に入って何度か攻撃のチャンスを作りながらシュートまで行けない東京も、61分に永井を下げてアダイウトンを投入し、次の1点を狙いに行く。すると66分、浦和の青木がハーフウェーライン付近でトラップミスしたところをアダイウトンが奪い、そのままドリブルで中央突破。寄せてくる2枚のDFの間を強引に割って抜け出すと、そのままゴール左隅にシュートを流し込んで2-0。なかなかチャンスを生かせない時間が続いていた中で大きな意味を持つ追加点だけに、声を出しての応援が禁止されているスタンドからも、さすがに地鳴りのような大歓声、続いて万雷の拍手が響く。その後は浦和が更に攻勢を強め、東京は自陣で跳ね返す時間帯が続いたものの、東京は選手交代を活用しながら粘り強く対応。結局、最後までゴールを割らせずに2-0のまま試合終了。東京は、対浦和で5年ぶりの勝利。更に味スタでの試合に限れば、2004年9月以来、実に16年ぶりとなる浦和攻略となった。
5ヶ月ぶりのスタジアム観戦、相性の良くない浦和戦、更に橋本の東京でのラストゲームなど、様々な舞台設定が絡み合う中での試合だっただけに、万感の思いで噛み締めることのできる1勝だった。最大の勝因はやはり守備だったと思う。試合の立ち上がりから永井がフルスロットルでチェイスをかけ、2列目の東と安部も連動してプレスをかけることで、中央に簡単に起点を作らせなかった。一方の攻撃は勢いで押し切るのではなく、サイドからじわじわと中を侵食していくような形。右からは室屋のクロス、左からはレアンドロのカットインが主な手段となったが、先制点の場面では室屋がハーフスペースまで侵入できており、狙った形で崩すことができたといえる。後半は攻めあぐねる時間もあったが、アダイウトンが追加点を奪って以降は効果的なカウンターを繰り出すことができていた。リーグ再開以降、4-1-2-3のシステムに関してはやや手探りという印象の試合が続いていたが、今日の試合ではようやくフィットしてきた感があり、今後が楽しみな勝利だった。そしてこの試合で東京に別れを告げる橋本も、ハイライトといえるようなビッグプレーは無かったが、アンカーの位置で的確にスペースを埋め、東や安部のカバーをしっかりとしてくれていた。背番号「18」の離脱がチームにとって痛手なのは間違いないが、それよりもまず、橋本の海外挑戦の成功を強く祈りたい。試合後の橋本の壮行セレモニーでかつて同じ背番号「18」を背負った石川から橋本への花束贈呈に感動し、大満足で味スタを後にする。観客数が抑えられていたこともあり、帰りの飛田給駅までの歩道や京王線車内も「密」になることなく、快適な帰路だった。